私の経験がだれかの役に立つ: My experiences help someone

私が経験したこと、知ったことをつづり発信します。だれかにとって有益な情報になればとの思いを込めて。

安愚楽牧場に出資しないかと誘われた話

ずいぶん昔のことになるが、安愚楽牧場に出資しないかと誘われたことがある。

あらかじめ断っておくと、この牧場は2011年に破産している。牛に出資して高額なリターンを得られると謳われていたが、最後は経営破綻して出資者たちは大損した。

 

私が誘われたのは2008年だったと思う。職場の先輩たちと飲んでいる時に誘われた。というか、「ずごくいいよ」「オススメだよ」と言われた。

牛に出資する、その牛が子どもを産んで、それを売って利益を出している。和牛だから高く売れる。BSEが問題になった時も何もダメージを受けなかった。年間の利回りがいいし、年間和牛数キロが送られてくるよ。

そんな話だったと思う。先輩たち数名はすでに安愚楽牧場に出資していて、銀行に預けるよりずっといい金利でお金が増えているという。おいしい和牛も送られてきたと言っていた。のちに破産する安愚楽牧場だが当時はそんな予兆はなく、彼らは純粋に善意で私に安愚楽牧場を紹介してくれていた。この時点で彼らは危ない商売だと微塵も感じていなかった。よかれと思って私に紹介してくれていたのだ。

当時の私は一瞬興味を持ったが、結局投資はしなかった。理由はふたつある。

ひとつめは「おいしい話には必ず裏がある」という母の言葉が頭の片隅にあったから。

しかしふたつめの理由の方が大きいだろう。ふたつめの理由は出資するほどまとまったお金を持っていなかったから。当時私は入社数年目だった。入社1年目に新車を購入し、その借金は2年目に完済したのだが、安愚楽牧場に誘われた時点での貯金はほとんどなかった。安愚楽牧場の出資は当時50万円からだったが、ハイリターンを得るには100万以上が必要だった。このころの私には、そのお金がなかったのだ。

そんなわけで、少し興味を持ったが、結局出資しなかった。

その数年後、安愚楽牧場は破綻してニュースになった。出資していた先輩たちは大損したらしかった。でも詳しくは聞けなかった。

 

投資話を持ってくる人の多くは、自分がいい思いをしているから善意や親切心で話し出す。聞き手は「この人は信頼できる人だ」「この人が私をだますわけがない」と思って信じてしまう。しかし、疑うべきは紹介者ではない、出資先そのものだ。紹介者自身は自分が実際にいい思いをしていて、だますつもりはなく紹介しているのだ。だから彼/彼女を疑っても何も出てこない。疑う相手を間違えると判断を誤る。

 

投資話を聞くときは目の前の話し手ではなく、その向こうにある投資先そのものを見極めよう。